B. B. キング ライヴ・イン・クック・カウンティ・ジェイル

B. B. キング ライヴ・イン・クック・カウンティ・ジェイル

B. B. King Live in Cook County Jail

 

ベン・Eが亡くなったと思ったら今度はB. B.が亡くなりました。最高のブルース・シンガーでありギタリスト。同じ誕生日なのがこんなに嬉しい人はいません。9月16日に生まれて良かった。

 

エリック・クラプトン山口冨士夫など多くのギタリストの教科書になったライヴ・アット・ザ・リーガルも良いですが、僕は断然クック郡刑務所のライヴ盤のほうが好きです。サム・クックのコパとハーレム・スクエアみたいな関係の2枚ですね。とてつもないブルースのライヴ盤だと思います。マディ・ウォーターズのアット・ニューポート・1960と並んで。

 

1970年9月10日、イリノイ州クック郡刑務所(アメリカ最大の刑務所、アル・カポネも入ったことがある)で行われた慰問ライブ。アルバムの1曲目は女性司会者によるイントロダクションです。「美しいシカゴの一日に、素敵な午後を過ごしましょう」と始まり、保安官のウッズ氏を紹介します。ここで囚人たちからブーイングが巻き起こります。お次は裁判官のジョセフ・パウエル。ブーイングはさらに大きくなります。

 

「さて、ブルースの王様としておなじみのB. B. キング。彼はすべてのブルース・シンガーの取締役会長(chairman of the board)です。しかし私たちが何と呼ぼうと、彼はただ立派な、謙虚な人です。歓迎しましょう、ミスター・キング」

 

間髪入れずにアップ・テンポで始まるエヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース。毎日がブルース、もううんざりだ!続けてハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット。B. B.が唄うブルースの真髄は歌詞の親しみやすさにあります。歌詞にストーリーがあるから、彼は唄いながらギターを弾かないのです。男らしさや呪術的な面を強調するマディと比べるとおもしろい。

 

 

フォードの新車をあげたのにお前は言う、「キャデラック(Cadillac)が欲しいわ」

10ドルのディナーをおごってやれば、「軽食(snack)をありがとう」

最上階の部屋に住ませたのに、お前はそれを掘っ立て小屋(shack)だと言う。

7人も子どもを生ませたのに、いまお前はそれを戻し(back)たがってる!

 

俺は落ち込んでいる、この前会った(met)日から

俺たちの愛はまさにブルースだ、どうしてそんなに冷たくできる(get)んだ?

 

 

3曲目はプリーチ(説教)が熱いウォーリー・ウォーリー。女たち!男たち!と言ってそれぞれに説教をします。男女双方からあがる歓声がすごく良い。その後にしっかりオチがあって、「俺がやらかしたときは、骨を欲しがる子犬みたいにひざまずいて謝る」という。

 

午前3時のブルース、ユー・ノウ・アイ・ラヴ・ユーと初期のメドレーをやり、スウィート・シックスティーンとライヴは続きます。1960年にリリースされたこの曲も「俺の兄は朝鮮に、妹はニュー・オリンズにいる」という歌詞が印象的です。これは朝鮮戦争と、1960年にニュー・オリンズで起こった学校問題を意識しています。

 

最も人種差別が激しかったニュー・オリンズでは、1960年に白人小学校が黒人にも開かれることになりました。州政府や住民はこれに猛反発します。州知事がそれを阻止するために「刑務所に行ってもいい」と言うぐらいです。ノーマン・ロックウェルの絵「私たち皆が共に生きている問題」を見れば一発でどういうことかわかります。初めて白人学校に行くことになった4人のうちの1人、6歳の黒人少女ルビィ・ブリッジスがモデルです。

 

Norman Rockwell - The Problem We All Live With

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それからガンズのスラッシュもよく演奏する、最も有名な曲スリル・イズ・ゴーンをやって、最後はプリーズ・アクセプト・マイ・ラヴで締めくくります。「名前さえ知らないけれど、お前を愛している」という歌詞で始まるこの曲を、彼はきっと囚人たちに捧げたのだと思います。

 B. B. キングの曲を聴くと、ギターになぜトーン・ノブがついているかわかります。ノブを調節しているのが見えるような気さえします。安らかに眠ってください。

 

B. B. King - Live in Cook County Jail 


 

Live in Cook County Jail

Live in Cook County Jail

 

  

Live at the Regal

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