バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)

 

ヒーロー映画「バードマン」に主演しかつてはスターだったが、今は落ち目の俳優リーガン(マイケル・キートン)。彼は再起をかけて脚本・演出・主演でブロードウェイの舞台をやろうとする。プレビュー公演がせまる中、いろいろなトラブルが起こって…

 

やって参りました、本年度アカデミー作品・監督・脚本・撮影賞4冠の1本です。まずこのタイトルがいいですね。タイトルに「あるいは」って入っているとテンションが上がります。ハインリヒ・マン『ウンラート教授 あるいは―暴君の末路』とか、マルキ・ド・サド『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』とか。

 

ただ、「無知がもたらす予期せぬ奇跡」という訳はどうかと思います。まずヴァーチュー(virtue)というのは奇跡ではなく美徳で、対義語はヴァイス(vice)悪徳シド・ヴィシャスのヴィシャス(vicious)の仲間ですね。主人公が「無知であることの思いがけない美徳」がこの映画のテーマです。

 

リーガンはバードマンの栄光を忘れられずに、それが強迫観念になっていて、ずっと「バードマン=もう一人の自分の声」が幻聴のように聞こえています。それに加えてこの映画にはカットがなく、映像が120分シームレスにつながっているように編集されています。現実と妄想、シーンとシーンの境目がわからないのが効果的でした。

 

そして主演のマイケル・キートンが元バットマンだったり、物語のキーパーソンの批評家のババア(舞台がロングランになるか打ち切られるかは、ニューヨーク・タイムズに載る彼女の批評に左右される)がさんざん映画や映画俳優を「映画の中で」ディスるというのがおもしろかったですね。これぞメタフィクション(一度この言葉を使ってみたかった)だ!と教えてくれるような作品です。

 

舞台化しようとしている作品はレイモンド・カーヴァーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』でした。音楽は基本的にドラムソロだったのですが、これが映像と合っていてとても良かった。

 

衝撃的なラストシーンをぜひ劇場に見に行ってください。

★★★★☆

 

 

愛について語るときに我々の語ること  THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈2〉

愛について語るときに我々の語ること THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈2〉