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おみおくりの作法

おみおくりの作法 Still Life

 

ロンドンのケニントン地区でケース・ワーカーをやっているジョン・メイ(エディ・マーサン)の仕事は、孤独死した人を弔うこと。葬儀に出てくれる人はいないか探し、その人がどう生きたかを調べ、BGMを選び、弔辞を書き、埋葬に立ち会う。誠意をもって仕事をこなしていた彼だったが、他地区との合併でクビを言い渡される。最後の案件は彼の部屋の向かい側に住んでいた、自分とは正反対の男で…

 

ジョンはさえない中年の地方公務員(ゴーゴリの「外套」を思い出しました)で、友人も家族もおらず、つつましい生活を送っています。でもとてもぱりっとした人で、仕事はきっちりやります。長年勤めてきた職場をクビだと言われ、彼に変化がおとずれます。いや、それまでも持っていた感情がでてきたと言うべきでしょうか。

 

最後の案件の男はアル中の荒くれ者。ジョンは最後の仕事ということもあり、いろいろな場所にその男が生きていた証を探しに行きます。そこがこの物語のメイン部分で、ものすごく淡々と進んで行きます。電気のオン・オフ、電車の進行方向、何度もでてくる自宅近くの道が効果的に使われていました。

 

事務的な上司は「葬式は残された人のためにある」と考えています。僕も近い人を亡くして何度か葬式を体験して、そう考えていました。しかしジョンは死者にも想いがあると信じています。孤独に死んでいった人は特にそうなのかもしれません。後任の女がまた嫌な奴で胸くそ悪かった。効率しか考えなくなったら人間である意味が何かあるのだろうか。

 

死んでしまった男の娘と不思議にお互い惹かれ合って、彼の人生は輝き始めます。しかしそれが彼の人生を狂わせてしまいました。このラストをどう評価すればいいのか自分でも本当にわかりません。エディ・マーサンの演技は素晴らしかった。あんなにいい顔する俳優はなかなかいません。

 

原題のStill Life スティル・ライフとは静物画のことです。ジョンは今まで自分が見送った人々の写真をひとつのアルバムに集めて大切にしています。ひとりひとりの人生が静物画のように、そこにリアルに存在していました。彼の人生もまたそうでした。

 

★★★☆☆