『ライ麦畑でつかまえて』 J・D・サリンジャー

ライ麦畑でつかまえて』 J・D・サリンジャー

"The Catcher in the Rye" by J. D. Salinger

 

何年か前に野崎孝訳を読んで、今回原書を読みました。1951年の小説なのでもう60年以上前ですね。主人公は16歳の少年ホールデン・コールフィールド。高校を退学になってから3日間ニューヨークの街をさまよったのを、精神病院から回想しているという話です。

 

彼の目には、世の中すべてがイカサマに、出会う人すべてが鼻持ちならない人間に見えています。ドンキに買い物に行ってしまったときの不快感を数百倍にして、ニューヨークの街中に溢れさせた感じ。

 

彼が許せるのは無垢な存在である子どもたちだけ。妹のフィービーと病死してしまった弟のアリーは特にそう。兄弟たちはおそらく自分の分身(村上春樹の鼠と同じ)で、もう失われてしまった、かつての無垢な自分自身の象徴なんですね。

 

タイトルのキャッチャー・イン・ザ・ライというのはロバート・バーンズの詩が由来になっています。彼は「ライ麦畑でつかまえて」欲しいのではなくて、「ライ麦畑で捕まえ手」をしたいのです。無邪気に遊ぶ子どもたちが崖から落ちてしまわないように、自分のような人間にならないように。

 

ジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマンは、警察が到着するまで現場でこの本を読んでいたそうです。狂信者であった彼は、ジョンがイノセンスを失っていくのを見ていられず撃ち殺したと言われています。

 

この小説は第二次大戦直後のアメリカの若者言葉で書かれていて、1文に2語ぐらい罵り言葉が入っています。ガッデム(goddam)、インチキ(phony)、クソ野郎(bastard)、サノバビッチ(sonuvabitch)、まぬけ(moron)、ひどい(lousy)のオンパレード。

 

他にも当時のスラングがいっぱい出てきます。「電話をかける」(give 相手 a buzz)、「ヤる」(give 相手 the time)、良い意味でも悪い意味でも使われる「たまらない」(~ kill me)などなど。黒電話と蜂の羽音は似てますもんね。ブンブン!

 

一番シビれたのは、フィッツジェラルドの『ザ・グレート・ギャツビー』(これも去年原書で読んだ)の話をするところでした。ここで彼がほとんどの人名にoldをつけて呼んでいた意味の半分がわかりました。ホールデンには僕も俺も似合わない気がしてどう訳すか悩ましいところですが、どっちかといえば僕かな。

 

「僕はザ・グレート・ギャツビーに夢中だったんだ。オールド・ギャツビー。友よ。やられたぜ。とにかく、僕は原子爆弾が発明されて嬉しいんだ。もしまた戦争があったとしたら、僕はあのクソッタレのてっぺんに座るつもりなんだ。喜んで、神に誓ってそうするよ」

 

“I was crazy about The Great Gatsby. Old Gatsby. Old sport. That killed me. Anyway, I'm sort of glad they've got the atomic bomb invented. If there's ever another war, I'm going to sit right the hell on top of it. I'll volunteer for it, I swear to God I will.”

 

Catcher In The Rye - Guns N' Roses



 

The Catcher in the Rye

The Catcher in the Rye

 

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

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キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

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